
レオス・カラックスはもっとも好きな映画監督の一人ですが、25年間で4本しか作品を発表していません。
“カラックス”と聞いて、彼の作った映画4作のタイトルをスラスラと答えられる人は、「『カラマーゾフの兄弟』の兄弟全員の名前を言えるか?」と聞かれて
「ドミートリィ、イワン、アリョーシャ、スメルジャコフ」
と即答できる人の数と同じくらい少ないかもしれません。
そんなレオス・カラックスが東京を舞台にした映画を撮影中らしく、なんと前作
「POLA X」から9年ぶり。
公開が待ち遠しいので、久しぶりにカラックス作品でも特に好きな、この作品を再観賞してみました:
「汚れた血」(Mauvais Sang)
愛のないSexによって感染する新種の病気“STBO”の恐怖が蔓延する近未来のパリ。 天涯孤独の少年、アレックス(ドニ・ラヴァン)は、恋人のリーズ(ジュリー・デルピー)と過ごす時間さえも虚しく感じる毎日。
どこか遠くで人生のすべてをやり直したいと考える彼は、亡き父の友人の中年男マルクに誘われ、金庫破りの犯罪に手を貸すことに。
そこでマルクの情婦アンナ(ジュリエット・ビノシュ)と出逢い、その不思議な魅力に惹かれていくが・・・。
「心に茨を持った少年」と「激しく愛を求めて疾走する少女」、そして「シャボン玉のように掴みどころのない女」の三者三様の愛が交錯する物語。村上春樹的に言えば「ノルウェイの森」の“僕”と“緑”と“直子”みたいな構図。(意味不明な人は「ノルウェイの森」でググりましょう)
86年の作品とは思えないスタイリッシュな映像で、「CUT」のようなお洒落な雑誌の、特にカッコイイ写真だけを次々とフラッシュムービーで観せた・・・みたいな感じでしょうか。
リュック・ベッソンの「サブウェイ」もそうですが、80年代のフランス映画にはセンスの際立つ作品が多いです。「サブウェイ」が「ロックな映画」ならば、「汚れた血」は「パンクな映画」。本作はこんな方にオススメ:
1.「ぼんやりとした孤独感」や「とにかく今すぐ何かを飛び越えたい衝動」をテーマにした映画や小説が刺さる人
2.デヴィッド・ボウイの“Modern Love”が大音量で流れ出したら、なぜか全力で疾走する主人公・・・というシチュエーションを聞いて気になる人
3.同じく80年代のフランス映画「ディーバ」もストライクな人
4.ゴダールの「気狂いピエロ」の赤・青・黄の映像の色使いが好みの人
5.ひょっとしたらキム・ギドク監督の「うつせみ」も好きな方
6.透き通るような肌と美しさを持っていた10代のジュリー・デルピーを一目見たい・・・と思う男性
7.映画には「感動」よりも「衝動」、「感銘」よりも「共鳴」を期待する人
この映画ではジュリー・デルピーもさることながら、ジュリエット・ビノシュも非常に美しく撮られています。
ビノシュは実はあまり好きではないのですが、この映画では、彼女を苦手な男性が観ても思わず魅了されてしまいそうなくらい綺麗です。
カラックス監督は、ひょっとしたら村上春樹のある小説の主人公のように、「一緒に街を歩いていて、すれ違った男が思わず振り返るような」一般的な美人ではなく、他人が見たらどうってことないかもしれない女性に、自分だけの特別な美を見出すタイプの男性なのかもしれません。
その意味では「グラビアアイドルみたいなコなら誰でもいいから付き合いてぇ〜」とのたまってしまう男性は、カラックス作品を観てもピンと来ないような気がします。
イラストはジュリエット・ビノシュがドニ・ラヴァンの血を頬につけたまま、手を広げて疾走していく有名なシーンを描いてみました。
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音楽で観る映画(4)−「汚れた血」